病室に行くと既に彼がいた。
「紗葉いなくてびびったんだけど…そっか、検査の日か。」
そう言って彼は笑う。
そんな彼にとりあえず笑ってみせた。
…思いっきりつくってたけど。
すると彼は不機嫌そうに眉を動かした。
「なんかあった?」
「…別にないけど。」
あったよ。思いっきり。あったよ。
「嘘。なんかあったって顔してる。」
なんでばれちゃうの。
やめて。泣きたくなっちゃう。
やめて。それ以上悲しそうな顔しないで。
どうして。どうして、あなたがそんな顔するの。
「まぁそんなことはいいじゃん。」
そういって彼の横を通り過ぎようとすると腕を掴まれた。
「なにっ…離してっ…」
「なにがあったか知らないけど…そんな顔しないで。明日もそんな顔だと恵たち悲しむと思うし。
紗葉には笑っててほしい。」
彼の目は真剣そのもので。
なぜか目がそらせなかった。


