読み終わって自然と頬に何かが伝うのを感じた。





「すみませ、男が泣くって気持ち悪いですかね…」



「ううん、そうは思わないわよ。誰かを思って泣いてる人のことを気持ち悪いなんて思わないわ。」





そう言って笑う紗葉のお母さんがどことなく紗葉と重なって。涙を流しながら俺も微笑んだ。






「…このデザイン画、俺ら一人一人に描いてくれたんですって。」





紗葉が言ってたとおり左上に小さくそれぞれ名前が描いてあった。




…俺、スーツ?




気になって裏返すと、紗葉からのメッセージが書かれてた。





『誠はスーツ。ごめん、これだけはすぐにパッと浮かんだ。誠、医者になりたいって言ってたでしょ?だからそういう時スーツ必要かなって。白衣でもよかったんだけど、ね。誠の夢、私ちゃんと応援してるから!頑張れ!』





………俺、馬鹿?




いっつもそうだ。紗葉のことになると周りが全然見えなくなる。




そうだね、真奈の言う通り。




自分を見失ってた。




こんな俺、紗葉は望んでないよね。






「…すいません、これ本当にありがとうございます!」




「ん?あ、いえいえ!全然!!ごめんね、本当は学校終わってからで良かったんだけど…」





申し訳なさそうにする紗葉のお母さんに首を振る。





ううん、紗葉のおかげで、救われた。





やっぱり俺間違ってた。







「…あ、あと、ごめんなさい。俺、これから、…あ、真奈たちってわかります?」





「ええ、紗葉からこれ渡された時に聞いてるわよ。私の大切な人達って言ってたから。」





「…、はい。俺、今から会ってくるんで、…折角来てもらったのにすみません!これで失礼します!!」




「いえいえ、全然。気にしないで頂戴。私がこんな時間に呼び出しちゃったのが悪いんだから。」






微笑む紗葉のお母さんにもう一回頭を下げて、茶色の封筒ごと持って店を出た。