「紗葉ちゃん…!しっかりして…!」
看護師にそう言われるけど、吸う息は浅くて、ひゅ、ひゅ、と音が鳴る。
今は、1時くらいだからみんなは学校だけど多分お母さんが連絡しちゃったと思う。
…心臓が今までにない速さで脈打つ。
大急ぎで人口呼吸器がつけられた。
少しだけ息をするのが楽になって、体の力が抜ける。
「…、紗葉っ!頑張って、頑張って…!!」
泣きながら病室に入ってきたお母さんとお父さんをみるけど、霞んでいて、焦点が定まらない。
「…お母、さんっ…、お父さ、ん…?」
「そうよ、いるよ。お父さんもお母さんも。…ここに。」
決して強くない力で私の手を握ってくるお母さんから体温が伝わってくる。
…あったかい。
そう思って、私も力が入る限り精一杯握り返したけど、微かに動く程度だった。
「大丈夫だ、紗葉っ、…お前は1人じゃないぞ。」
お父さんの言葉にそっと笑う。
うん、やっと、その言葉の意味がなんとなくだけど分かったよ。
“大丈夫”、“1人じゃない”って。
…お父さんの言う通り、だったね。


