「…最初は憎らしかったの。私にはないものをたくさん持ってる誠が。」
「…紗葉にないものを、俺が持ってるの?」
「ほら、自覚がない。…持ってるよ。たっくさん。だから、最初は嫌いだった。真奈ちゃんたちも誠も。」
“そんなはっきり言う?”なんて少し笑いながらも私の話を聞いてくれる誠の澄んだ目に、
そっと私も目線を合わせる。
「でも、みんなといるうちにそんなのどうでもよくなっちゃったの。みんなといると病気なんか忘れて。あそこがどんどん私にとって居場所になってた。」
「うん、」
「私ね…、家族と美由紀以外に優しさを貰った記憶がなかった。好きって言って貰った記憶がなかったの。もしかしたら貰ってたのかもしれないけど…、小3より小さかった私はあんまり記憶に覚えてないの。」
…人の温かさなんて忘れてた。優しさも愛情も覚えていなかった。
だからこそ人から自分が必要とされてるのかいつも不安だった。
「そんな私はいつも不安しかなかった。…、でもそんな毎日を変えたのは誰だと思う?」
少し微笑みながら首を傾げると、同じように首を傾げられる。
「…誠だよ。」
「…俺?」
驚いています、何て顔に書いてある誠にちょっと声を出して笑う。
…そう、誠だよ。
── 自分に素直になって。…望んだように生きていいのよ。
静かに、でもどこか凛としたお母さんの声が私の頭の中で再生される。
…神様、私が素直になること今回だけ、許してくれませんか。
「…あのねっ、…私ねっ、」
目の前の彼のコロコロ変わる表情の中にある澄んだ瞳は、
何かを見透かすような純粋な目。
…………、だけどそんな誠の瞳が大好きなんだ。
「私っ、…誠のことが…っ」
折角勇気を振り絞って口を開いたのに言葉を伝えられなかったのは、
……いつの間にか誠の人差し指が私の唇を制していたから。


