「…、あら、紗葉ちゃん。どうしたの?お出かけ?」
「…お、ざきさん…。」
病院から出る1階の自動ドアの手前で30代くらいの女の人に話しかけられた。
小崎さんは私がこの病院に初めて来たときからずっとここで看護師をやっていて、
私が橘田先生の次に顔見知りな人でもある。
「こんな天気良いのにこれから雨降るみたいだから傘持ってた方がいいわよ、って……、紗葉ちゃん今日は外出許可何て、出てないけど…。」
「…っ、!」
こんなところで捕まったら意味なんてない…っ、
「あ、待って!、紗葉ちゃん!?」
「ちょ、小崎さんどうしたんですか!?」
「紗葉ちゃんが逃げ出しちゃったの!!橘田先生に…っ!!」
後ろで何か言ってるけど、そんなの気にしてる場合じゃない。
小崎さんに捕まる前にと思って必死に自動ドアをくぐり抜けて全力で走った。
「ああ、…これ、完璧にお母さんにも電話行くじゃん。」
走りながらそんなことを呟く。
小崎さんにばれなきゃ少しは連絡されるのも遅れたのになあ…。
運良く、病院の目の前の信号も青を示していて、
スピードを落とすことなく走りきった。


