「…紗葉、何かあった?」
「…別に。何もないよ?」
皺を寄せたまま話しかけてくる誠の目は見ずにそう答える。
誠の目は、いっつも何かをお見通しちゃうような、真っ直ぐな瞳。
……、だから苦手。
「…そ。」
ごめんね、誠。私が弱いだけ。
私が弱いからみんなを傷つける。
「紗葉ちゃん、あのねっ、今度うちの学校で体育祭があって、そのTシャツ…デザインできる?」
「体育祭…?」
うん!って頷いて説明し始める真奈ちゃん。
どうやら、毎年クラスごとにTシャツをデザインしてそれを作り体育祭に参加する、とのこと。
「メイド服、すっごく可愛かったから…、ダメ、かな?」
「………。作りたい、けど、ごめん。…もう絵はかけないの。」
ごめんね、本当に作りたい。
でもね、もう夢なんて捨てたから。
「そっか…。なんか、ごめんね?」
「ううん、夢はねもう私にいらないの。だからね、お別れしようと思って。」
……、まだ大丈夫なんじゃないか、と思った。
急すぎるし、早すぎる。
でも、このタイミングを逃したら私は確実に、
…またみんなに甘えちゃう。


