「…可哀想だね。」
下を向いて彼が言う。
「…どこも可哀想なんかじゃない。どうせみんな死ぬんだから。」
「…そうじゃなくて。
これから生きることに希望がないの、可哀想だなって。」
その言葉に驚いて顔をあげると彼は切なそうに微笑んでいた。
「たしかに…、辛いかもしれないけど、生きることを諦めた時点で終わりじゃないかな。」
…そんなの、私だってわかってる。わかってるよ。
わかってないのは彼の方。
そんなことにさえもイライラして唇を強く噛み締めた。
私は生きることを諦めなきゃいけない運命なのに。
「じゃあ、俺リハビリの時間だから、行くね。…また明日。」
そういうと彼はドアをあけてリハビリ室へ向かっていった。
…私の大嫌いな言葉を残して。