「あ、ちょっと待ってください。」




病室にかえろうとして向きを変えたとき、




私の思いとは反対に彼の呼び止める声がきこえる。




「…なんですか」






「同い年…ですよね、看護師さんからききました。椎名誠。よろしく。」






「…朝日奈紗葉、です。」






「ためでいいよ、同い年だし。」








「うん、わかった…」






「じゃあ、俺から言いたかったのはそれだけだから。」








「……失礼しました。」







ドアをあけて病室から出るとき、彼は“またね”なんていいながら笑顔で手をふっていた。