「あー・・うん、それ」


ゆっくりとした口調で
そう言うと


つとむの手に握られ
私の顔の前にぶら下がっていた鍵は
背後から、ヒョイと
奪われるように持っていかれた。


「・・!?」


勢い良く振り返るつとむに連動し
私の体も勢い良く動き
視線は、つとむと同じ方向へ向くと


黒崎伸治と、彼女の姿が
目の前へ入ってしまっている。



「え?な、何ですか?」


上ずったように
そう、つとむが言うと



「やっぱ、無理」


そう独り言のように呟く黒崎伸治の言葉と同時に
つとむに支えられていた私の体は
乱暴に引き離され


そのまま鍵を開け
中に入ると
鍵を閉めてしまった。




扉の向こうでは


「し、しんちゃん!?
しんちゃん!ねぇ、開けてっ」


ドンドンドンっ


彼女が、黒崎伸治の名を何度も呼び
何度も扉を叩いている。



扉一枚を挟んだ、玄関の中では



「んっ・・・・ふ・・」



無我夢中で口づけを
何度も何度も重ねている私達がいる。