その日を境に、

黒崎伸治は
夕方に10分ほど顔を出し
私に触れようとも、
近づく事すらしないまま

その足で
隣へ帰って行くようになった。


一日、10分。


たとえ短時間でも
私に会いに来てくれる。


それだけが
崩れそうな心を
わずかに支えてる。


けれど、隣から時折聞こえる
彼女の声や、
出かける時の声は

嫌でも耳に入ってきてしまい

両手で耳を塞いでしまう自分もいて

何かの拍子に
私は壊れてしまうんじゃないかと
恐怖に襲われ


テレビの音量を上げるしか

自分自身を守る方法が
見つからなかった。


きっと・・・・


両隣には

この大音量のテレビの音が
大迷惑なほど
聞こえている事だろう・・・