他人の彼氏

事務員さんの車に乗ると、


「一応、大雑把な目印は
黒崎さんに聞いたんですが
細かい道は分からないので
案内して下さいね」


「はい、すいません・・・」


「いえいえ、仕事のうちですから
気にしないで下さい」


美人で、人当たりが良くて、優しくて

何て できた女性なんだろう。

こんな、こんな・・・

素敵な人が事務員さんと
黒崎伸治が仕事してるなんて・・・


なんて・・考えると

変なモヤモヤが
見え隠れしてしまう
嫌な人間が

私自身なのだけど・・・。


そんな事を考えながら
アパートまでの道順を説明しているうちに
いつの間にかアパートの前まで来ていた。


「あ、ここです。
ありがとうございました」


そう言って
事務員さんの方を見ると
アパートの方を
じっと見て反応がない・・・。



・・・・?


何か、事務員さんの様子が・・・



「ここ、黒崎さんが
住んでるアパートですよね?」


つい、さっきまで
優しく笑顔の事務員さんは

突然
強張った表情になり
私の方を見ている。