他人の彼氏

聞く暇もないまま

お兄ちゃんの車が停まっている路肩を発見し

輸送車をUターンし
路肩に寄せた。


「あれ、希も来たのか?」


少し疲れた様子で
花壇横に座っていたお兄ちゃんが立ち上がった。


そんな中、

黒崎伸治はボンネットを開け
何やらしているけれど

素人の私には分かるはずもなく・・・


テキパキと
お兄ちゃんの車を輸送車に載せると


「代車出すんで、
ひとまず会社来てくれますか?」


「ありがとうございます」


そんな会話をし
輸送車に乗り込むと

3人で会話があるはずもなく

無言のまま車屋さんへと到着した。


そして、


「南さん、
ちょっと接客して」


「あ、はーい」


さっきの事務員さんが
事務所から出てくると


「こちらにどうぞ」


そう言いながら
事務所のソファーへ座るように促されると

「お疲れさまでした。
大変でしたね」

そんな優しい言葉を沿えられ

コーヒーとお菓子を出された。


何か・・・何か・・・


こんなきれいな人に
優しい笑顔と言葉と
お茶出されると

免疫のない私は
ドキドキしてしまって


「あ、その、いえ・・・」


お兄ちゃんも同じく
挙動不審になってしまっている

変な兄妹の図だ・・・。