圭伍くんは、一瞬、手をピタッと止めてしまって。




でも――あたしの方に、振り向きはしなかった。









「……迷惑?」


「だって…いつもここに来たら、自分の時間がなくなっちゃうでしょ?あたし……迷惑な女だよね……」








ここ、向いてくれないってことは――


肯定してるって事、なのかな…。





そりゃ、そうだよね。





だってあたし達、本当の他人だもん。


内山先生だって、こんなに関わるために紹介したわけじゃないと思うし。





あの初めて会った日1回で、話をまとめちゃえば良かったんだ……。








黙って振り向いてくれない圭伍くんに向かって、あたしは頭を下げた。









「……ごめんなさい」








――高校生だもん。


遊びたい。自分の時間が欲しい年頃。




なのに、1度しか会う予定がなかったあたしに…毎日、見舞いに来てくれる。






あたしがそれだけ重荷って事だよね。







すると、圭伍くんは。



また手を動かして、花を花瓶に生けて、そばのテーブルに置いてくれた。








「……ここ。お前が一番目の届くところだろ?」


「え…?あ…、うん……」








あたしがずっとベッドに寝ていても、真正面に見えるテーブル。



そこの、あたし側の一番隅っこに…あたしが一番見やすいところを選んで、置いてくれた。






本当はすごく優しい――圭伍くん。






だからこそ、あたしのそばにいたら…勿体無いよ。


もっと、健康で可愛くておしゃれで優しい女の子のそばに行ったほうがいい。







「……」





“ありがとう”って――言いたいのに……。





たったその一言が、言えない。




素直になるのが慣れてなくて。

それに、相手が圭伍くんなら尚更だ。








「何だよ、黙って。いつものルイの毒舌は何処行った?」


「……」







それなのに。


圭伍くんは、いつも通り。あたしに話しかけてくれる。





何で?



あたし、重荷になんかなりたくないのに……。