「ハイ、宮下さん。ニヤニヤしてないで授業ちゃんと聞いてくださいね? ついでに、ケータイも没収。」


 幸せな気分にひたっていた私を現実世界に連れ戻したのは、いつの間にか目の前に立っていたりんちゃんだった。


 しかも、いつもと違って喋り方もイヤにきれいで、静かに怒ってるんだってわかった。


 うえ~、りんちゃん怖いよー……。


 だって、口は笑ってるのに、目は全然笑ってないんだもん!


 りんちゃんは身体をかがめて、私にだけ聞こえるように耳元でささやいた。


「宮下、お前朝のホームルームもさぼっといて、いい度胸してんな。昼休み、職員室来いよ」


 教師らしからぬ言葉遣いでそう言って、教卓の方へ戻っていった。


 その足取りはなんだかご機嫌そうだけど……。


 り、りんちゃん、こわすぎっ!


 こわすぎだからっ!!


 恋愛小説とかでは、耳元でささやかれてドキっ、みたいなこと書いてあったけど、違う意味でドキドキしたよお~。


 ケータイもとられちゃったし、昼休みにバスケ見れないしぃ。


 りんちゃんのバカああああ!!!