体育館12:25~私のみる景色~


 そ、そうなんだ。


 サエさん、あの時あそこにいたんだ。


 でも、なんで佐伯先輩はサエさんの話を聞く気になったのかな……。


 そもそも、3年生は学校休みだったわけだし、いつ会っていたの?


 それに、なんでサエさんがそこまでしてくれるのかわからない。


「俺と藤村、早々に大学決まってさ。慶のところで働くのだけは絶対嫌だったから、違うバイト先探して。そこに、藤村がいたんだ。それからしつこく話聞けって言われて。宮下さんにひどいことしたから、これは自分の役目だって。それに、藤村のヤツ、宮下さんが……っ」


 佐伯先輩はそう言って、私の肩をぐいっとつかんで引き離した。


 さっきまで感じていた佐伯先輩の温度が離れて行って、寂しくなる。


 だけど、肩に置かれた佐伯先輩の手が暖かくて、今起こっていることは幻想なんかじゃないって思わせてくれた。


「私が、なんですか……?」


 佐伯先輩が言いかけたこと、すごく気になる。


 私はまた、何かしでかしたんだろうか。


 不安になって次の言葉をじっと待っていた。


 だけど、佐伯先輩が言った言葉は、私の想像をはるかに超えるものだった。


「……宮下さんが、さらに可愛くなったって。誰が言ってんだか知らないけど、そんなの聞かされて、とられるかと思ったんだよ……っ」


 今まで見たことのない焦った表情でまくしたてた佐伯先輩に、目が点になった。


 ……私がとられる?


 ……誰に?