体育館12:25~私のみる景色~


 柵に近づいて、体育館を見下ろした。


 そこにはぽつりと1つだけ、バスケットボールが転がっていた。


 なんだか寂しそうに見える。


 コート全体を見渡すことができるここ。


 特等席をキープして、毎日飽きもせずバスケを見ていた。


……佐伯先輩を、見ていた。


 走り回る先輩。


 仲間にパスを出す先輩。


 佐伯先輩の手を離れてキレイな放物線を描き、吸い込まれるようにしてゴールにおさまったボール。


 その時の先輩のはじけるような笑顔。


 そのどれも、私はきっと、忘れない。


 できることなら、会いたい。


 会って、話したい。


 ありがとうと、ごめんなさいと、おめでとう。


 伝えたいことが多すぎる。


 ……先輩への恋を終わらせることなんて、まだまだできそうにないよ。


 先輩のことが好きすぎて、今日この日のために、前に進むために髪だって切って気合い入れてきたのに。


 私は、佐伯先輩を好きじゃなくなる未来を想像して、怖くなった。


 後悔ばかりで、全然だめで、言いたいこと何一つ伝えられなくて。


 でも、終わりなんだよね。


 もう、会えないんだ……。