柵に近づいて、体育館を見下ろした。
そこにはぽつりと1つだけ、バスケットボールが転がっていた。
なんだか寂しそうに見える。
コート全体を見渡すことができるここ。
特等席をキープして、毎日飽きもせずバスケを見ていた。
……佐伯先輩を、見ていた。
走り回る先輩。
仲間にパスを出す先輩。
佐伯先輩の手を離れてキレイな放物線を描き、吸い込まれるようにしてゴールにおさまったボール。
その時の先輩のはじけるような笑顔。
そのどれも、私はきっと、忘れない。
できることなら、会いたい。
会って、話したい。
ありがとうと、ごめんなさいと、おめでとう。
伝えたいことが多すぎる。
……先輩への恋を終わらせることなんて、まだまだできそうにないよ。
先輩のことが好きすぎて、今日この日のために、前に進むために髪だって切って気合い入れてきたのに。
私は、佐伯先輩を好きじゃなくなる未来を想像して、怖くなった。
後悔ばかりで、全然だめで、言いたいこと何一つ伝えられなくて。
でも、終わりなんだよね。
もう、会えないんだ……。



