体育館12:25~私のみる景色~


 教室には、私と凉以外誰もいなくなった。


 みんながそれぞれ先輩のもとへ出はらっていて、ありえないくらいに静か。


 遠くからは微かに話し声が聞こえてくる。


 きっと3年生の教室は盛り上がっているんだろうな。


 ……佐伯先輩は、もう帰ったのかな。


 それとも、たくさんの女の子たちに囲まれてる?


 第2ボタンは、誰の手に渡ったんだろう。


 今日この学校の中で、結ばれる恋はいくつあるのかな。


 きっとこれから告白する人だっているはずだから。


 私みたいな気持ちで今日を迎えた人は、何人いるんだろう……。


 時計の針は、12時ちょうどを指していた。


 ……そろそろ、時間かな。


「凉、私、行ってくるね」


 そう言って立ち上がると、凉はじっと私を見つめた。


「……いってらっしゃい」


「うん、行ってきます」


 ぎゅっと抱きしめてくれた凉の腕をそっとほどいて、歩き出した。


 始まりの、場所へ―――……。