式は滞りなく進んだようで、いろんな思いを馳せていた私は、もう卒業生が退場するんだっていうことに気づくのが遅れた。
慌てて拍手をしつつ、体育館を出ていく3年生の背中を目で追いかけた。
佐伯先輩の姿を見つけたのはちょうど幕をくぐって、ここから姿を消すところだった。
一瞬でも、見ることができてよかった。
もしも見られなかったら、後悔し過ぎて死んじゃってたかもしれない……。
これから3年生たちは、思い思いの時間を過ごすんだろう。
仲の良かった友達と写真を撮ったり、思い出を語り合ったり。
千夏と純子は、部活でお世話になった先輩にあいさつしに行くみたい。
玄関ではたくさんの1、2年生がお目当ての3年生を出待ちする。
プレゼントや手紙を渡したり、「おめでとう」の言葉を直接言うために。
いつの間にか暗黙のルールはなくなったのか、それとも最後だからなのか。
私のクラスの女の子の中に、佐伯先輩に告白するだとか、ボタンをもらうだとか、そんなことを話している子が何人かいた。
「……亜希はいいの?」
「私はもういいんだよ」
心配そうに私を見る凉に、私はそう返すしかなかった。



