卒業式は、淡々と進んで行く。
卒業証書授与式では、佐伯先輩の名前が呼ばれるその一瞬だけに神経をそそいだ。
一文字も聞き漏らすことのないように、大好きだったその声を忘れないように耳に焼き付けて。
たった2文字の「はい」という、決して大きくはない声だったけど、体育館中に反響するよく通る声だった。
これで、佐伯先輩の声を聞くのも最後になる。
全部全部、最後になる。
笑いあったあの日も、悩みに悩んでメールをしたあの日だって、戻ってこない。
そしてこれからそんな日が来ることもない。
……好きだよ、大好きだよ、先輩のことが。
いろんな顔を見せてくれるようになったこと、嬉しかった。
先輩のことを知れて、嬉しかった。
好きになってよかった。
いろいろな思い出をもらったのに、最後のこの日に何も伝えられないのは、やっぱりすごく悲しいよ……。
唇を噛みしめて泣くのを我慢したせいでそこは薄ら血でにじんだけれど、その痛みも忘れたくないと思った。



