体育館12:25~私のみる景色~


「……私ね、好きでいるだけじゃ、いつの間にか足りなくなってた。近づけば近づくほど、もっと一緒にいたいって思うようになって。先輩に、好きになってもらえたら、すごく嬉しかったはずなの」


 私の言葉を、みんなは静かに聞いてくれている。


「でも、もう取り返せないくらいに距離が開いて。悲しいけど、当たり前だよね」


 ひとつひとつ言葉に出していくごとに、心は鉛のように重くなった。


 だけどもう、それを疎ましく感じることはない。


「好きでいることは、きっとやめられないと思う。もう、佐伯先輩と話すことなんてできないだろうし、自分の気持ちを伝えるつもりはもう、ないよ。……でも」


 この恋の終わりが来るとしたら。


 ……それは。


「卒業式の日、ずっと佐伯先輩を見ていたあの場所で。私、佐伯先輩の幻に、もう一度だけ告白しようと思う」


 目を閉じていても浮かんでくる、コートを走り回る先輩。


 キラキラと光る汗。


 周りの歓声に包まれながら輝いている先輩。


 先輩を好きになった場所で、私は気持ちに区切りをつけたいと思う。


「……後悔は、したくないからね」


 きっと佐伯先輩は、私にはもう会いたくないって思ってるはずだから。


 会いに行こうなんて思ってない。


 キレイな思い出に、するために。


 それでいいって思う。