「……私ね、好きでいるだけじゃ、いつの間にか足りなくなってた。近づけば近づくほど、もっと一緒にいたいって思うようになって。先輩に、好きになってもらえたら、すごく嬉しかったはずなの」
私の言葉を、みんなは静かに聞いてくれている。
「でも、もう取り返せないくらいに距離が開いて。悲しいけど、当たり前だよね」
ひとつひとつ言葉に出していくごとに、心は鉛のように重くなった。
だけどもう、それを疎ましく感じることはない。
「好きでいることは、きっとやめられないと思う。もう、佐伯先輩と話すことなんてできないだろうし、自分の気持ちを伝えるつもりはもう、ないよ。……でも」
この恋の終わりが来るとしたら。
……それは。
「卒業式の日、ずっと佐伯先輩を見ていたあの場所で。私、佐伯先輩の幻に、もう一度だけ告白しようと思う」
目を閉じていても浮かんでくる、コートを走り回る先輩。
キラキラと光る汗。
周りの歓声に包まれながら輝いている先輩。
先輩を好きになった場所で、私は気持ちに区切りをつけたいと思う。
「……後悔は、したくないからね」
きっと佐伯先輩は、私にはもう会いたくないって思ってるはずだから。
会いに行こうなんて思ってない。
キレイな思い出に、するために。
それでいいって思う。



