体育館12:25~私のみる景色~


「好き、です……」


 涙とともに、自然と口から滑り出した言葉。


 私がずっと、言いたかったこと。


 傍に行きたくて、近づきたくて、もっと先輩のことを知りたくて。


 その根底にあるのはいつだって、佐伯先輩を好きだっていうたった一つの恋心だった。


 ついに、言ってしまった。


 きっと佐伯先輩にも聞こえただろう。


 これでもう、元に戻れなくなったことも、なんとなくだけどわかってる。


 でも、大丈夫だよ。


 佐伯先輩をただ遠く、ギャラリーの上から見ているだけだった頃に戻るだけ。


 迷惑は、これ以上かけません。


 だからこれは、佐伯先輩にかける、最後の迷惑だから。


 ……許してください。


 耳に当てたケータイ電話の向こうからは、何も聞こえてはこない。


 でも、私の声を佐伯先輩はきっと聞いてくれてるっていう確信があった。


「先輩、私は……」


 続けて話そうとした瞬間、私の声は佐伯先輩の声と重なった。


 ……佐伯先輩の、冷たくて怒りを含んだ声に。