『……はい』
数秒の沈黙の後に聞こえてきたその声は、間違いなく佐伯先輩のもので。
飛びつくような勢いで、私はそれに反応した。
「もしもし……っ!」
出てくれないかもしれないと思っていたから、安心した。
だけど、それと同時になぜだか涙腺が緩んで、次の言葉が出てこなくなった。
『……はあ。何の用?』
大きなため息の後、至極めんどくさそうな声色で、佐伯先輩はそう言った。
普段よりも低い声にひるむけど、伝えたいことがある。
「せ、先輩。いきなり電話なんかして、ごめんなさい。あの、言いたいことが、あって」
紡ぎだした言葉は途切れ途切れで、ちゃんと向こうに聞こえているかはわからない。
けど……。
「どうしても、お礼が言いたかったんです。倉庫で私を見つけてくれたこと、それから、嫌がらせのことも。全部佐伯先輩が、先輩のおかげで、私は……っ」
言っている途中で、自分が何を言っているのかわからなくなった。
いざ話し始めたら、伝えたいことが思いのほかたくさんあることに気が付いて。
だって、今回のことだけじゃない。
膝を怪我した時も、アドレスを交換してくれたことも、体育祭のリーダー、駄菓子をくれたこと。
佐伯先輩に関わるすべてのこと、全部に“ありがとう”の気持ちがあって。
その裏には、ずっと。
ありがとうっていう感謝の気持ちの前に、もっとずっと言いたかった言葉があって。
1番伝えたいことは……。



