体育館12:25~私のみる景色~


 そんなことを思えば思うほど落ち込んで、ショックがよみがえって、苦しくなる。


 たくさん助けてもらったのに、ありがとうの一言も言えないなんて。


 凉からも『ちゃんと佐伯先輩と話せた?』ってメールが入っていた。


 今日のことを話して慰めてもらいたいけど、こんな事態になったなんて自分の口からは言えそうにない。


 ましてやお礼を言うどころか間接的にフラれたなんて、慶ちゃん先輩と付き合ってるって誤解されたなんて、言えないよ……。


 ぼろぼろととめどなく涙がこぼれて、枕は濡れていく。


 電気もついていない静かな部屋に響くのは、私のすすり泣く声だけ。


 ……メール、してみようか、佐伯先輩に。


 それとも、電話?


 泣いているだけじゃ何も変わらないことは、もうわかってる。


 誤解も、佐伯先輩にどう思われているのかも、今は考えない。


 助けてもらったことのお礼だけは、絶対に言いたかった。


 勇気を出して、佐伯先輩の番号を呼び出す。


 電話をかけるのにここまで勇気を振り絞ったのは初めてで、手に変な汗をかくけど。


 涙をぬぐってから、震える親指に力を込めて発信ボタンを押した。


 ケータイをそっと耳に押し当てると聞こえてくる、呼び出し音。


 その音に、心臓がバクバクと鳴る。


 出てくれるのかな……。


 数回のコール音が続くけど、それが途切れる気配はない。


 やっぱり出てくれるわけないか……。


 じわりと涙が浮かんで、電話を切ろうかと思った7回目のコール音。


 その音がふいに途切れた。