階段の下から私たちを見上げる佐伯先輩の表情は、言葉で言い表せないほどに冷たいものだった。
背筋が凍りついて、心臓がものすごい速さで動く。
急いで慶ちゃん先輩と距離をとるけどもう遅い。
少なからず慶ちゃん先輩も動揺しているみたいだった。
だって、今のを見られた。
私と慶ちゃん先輩は至近距離で見つめあっていて、微笑みあっていて。
そんな場面を見たら、誰だって思うはず。
勘違い、するはず……。
「宮下さんって、慶と付き合ってたんだね」
「……っ!」
その一言に、やっぱりと思った。
すぐに違うって言いたかったけど、言葉が出てこなかった。
今しがた目の前にいる慶ちゃん先輩に告白されたばかりで、ここではっきり違うって言うのは慶ちゃん先輩が傷つくと思ったから……。
佐伯先輩の表情からは何も読み取れなくて。
ただ一つ確定した事実は、佐伯先輩に私と慶ちゃん先輩が付き合っていると思われてしまったってこと。
1番誤解してほしくない人に、見られたくない場面。
さっきまで恐れていたことが、本当になってしまった。
「恭也! お前それ誤解……」
慶ちゃん先輩がすぐさま否定してくれたけど、佐伯先輩は信じていないみたいだった。
さらに、続けて佐伯先輩が言い放った言葉に、私はもう立ち直れないんじゃないかってくらいに打ちのめされた。



