体育館12:25~私のみる景色~


「お前、顔真っ赤」


 そう言って笑う慶ちゃん先輩に、ちょっとムッとする。


 自分だってさっきはタコみたいな赤い顔してたくせに。


「慶ちゃん先輩、ずるい……」


 本当に、ずるいと思った。


 一人だけ余裕そうで。


 私に告白の返事も求めもしなければ、私を責めることもない。


 自分の気持ちを押し付けようとしないところとか、こんなふうにいつも通りに話してくれる優しさとか。


「慶ちゃん先輩、実はめちゃくちゃかっこいいね……」


 ぼそりともらした本音に、慶ちゃん先輩は一瞬で顔をリンゴ色に染めた。


 ……うん、でも実はすっごく照れ屋さんなんだね。


 形勢逆転かな、って意地の悪い笑みを向けると「てめえ、タチ悪すぎ」と悪態をつかれた。


 自分でもそう思うよ。


「あ、そうだ。俺が言ったさっきの花言葉だけど、恭也がどういうつもりでお前に渡したのかは、俺も知らねえからな? ……友情、とかだったりしたらドンマイだな」


 ああ、仕返しされた。


 にやにやと笑う慶ちゃん先輩の言葉に、ずんっと落ち込む。


「まあ、考えなしに渡したかもしれねえし? それに、大丈夫だ。振られても俺が貰ってやるから」


「結構です!」


「うわ、ひでえ」


 冗談ぽく言ってケラケラと笑う慶ちゃん先輩に、ほっとした。


 なんだ、関係なんか何も変わらないじゃん。


 これもきっと、慶ちゃん先輩の優しさなんだろうなあ。