体育館12:25~私のみる景色~


 聞いたらこの関係が壊れてしまう気がした。


 後戻りできない気がした。


 だから、聞きたくなかった……。


「ごめん、慶ちゃん先輩……。今まで、気が付かなくて。私、たくさん傷つけた……」


 そう、私は慶ちゃん先輩をたくさん傷つけた。


 私が勝手に勘違いしたせいで。


「そんなことはどうでもいい。謝ってんじゃねえよ。亜希が恭也しか眼中にないの知ってるし」


 慶ちゃん先輩は、泣き出した私の頭をそっとなでてくれた。


 不器用な手つきだったけどすごく暖かくて、さらに涙があふれ出た。


「……なあ、ゼラニウムの花言葉って知ってるか?」


「へ……?」


 突然すぎて、何を聞かれたかわからなかった。


 ゼラニウムが何?


 そうだ、それって、佐伯先輩と慶ちゃん先輩に貰ったお花だよね。


 それがどうしたんだろう?


「あれにはさ、いろんな意味があるんだ。“友情”、“愛情”、“信頼”。ほかにもな。それで、お前にやった赤いゼラニウムの花言葉は……」


 慶ちゃん先輩は一度言葉を区切って、私の耳に顔を近づけ囁いた。


「“君ありて幸せ”」


 妙に色っぽい声で言われて、涙も引っ込んだ。


 君ありて幸せ、って……。


 なんかそれって。


「プロポーズしてるみたいだよなあ?」


 私の考えが読めたのか、クツクツと笑う慶ちゃん先輩に、顔が熱くなっていくのがわかる。