聞いたらこの関係が壊れてしまう気がした。
後戻りできない気がした。
だから、聞きたくなかった……。
「ごめん、慶ちゃん先輩……。今まで、気が付かなくて。私、たくさん傷つけた……」
そう、私は慶ちゃん先輩をたくさん傷つけた。
私が勝手に勘違いしたせいで。
「そんなことはどうでもいい。謝ってんじゃねえよ。亜希が恭也しか眼中にないの知ってるし」
慶ちゃん先輩は、泣き出した私の頭をそっとなでてくれた。
不器用な手つきだったけどすごく暖かくて、さらに涙があふれ出た。
「……なあ、ゼラニウムの花言葉って知ってるか?」
「へ……?」
突然すぎて、何を聞かれたかわからなかった。
ゼラニウムが何?
そうだ、それって、佐伯先輩と慶ちゃん先輩に貰ったお花だよね。
それがどうしたんだろう?
「あれにはさ、いろんな意味があるんだ。“友情”、“愛情”、“信頼”。ほかにもな。それで、お前にやった赤いゼラニウムの花言葉は……」
慶ちゃん先輩は一度言葉を区切って、私の耳に顔を近づけ囁いた。
「“君ありて幸せ”」
妙に色っぽい声で言われて、涙も引っ込んだ。
君ありて幸せ、って……。
なんかそれって。
「プロポーズしてるみたいだよなあ?」
私の考えが読めたのか、クツクツと笑う慶ちゃん先輩に、顔が熱くなっていくのがわかる。



