それなのに慶ちゃん先輩は、より一層腕の力を強めて私を離してくれる気配はない。
「……俺は、誤解された方が都合いいんだよ」
「なんで……」
慶ちゃん先輩は、佐伯先輩のことを諦めるつもりなの?
いろんなことを、上手く機能しない頭でぐるぐる考える。
慶ちゃん先輩のことが理解できないよ……。
彼の熱すぎる体温が、どんどん考える力を奪っていく。
抵抗する力もなくなってきたとき、ふいに身体を離されて顔を覗き込まれた。
逃がすまいとするかのように私の両肩をぎゅっとつかんでいるその手のひらも、服越しでわかるくらいに熱い。
「言っておくけど、ずっと誤解してんのはお前の方だ」
見上げた先にある慶ちゃん先輩の顔は思いのほか近くにあって、何かに耐えるような表情でまっすぐに私の目を見つめていた。
その顔は、なぜか真っ赤に染まっていて。
嫌でもわかってしまう。
わかってしまった。
「お前はずっと、俺が恭也を好きだとかすげえ勘違いしてたみてえだけど……」
やめて、聞きたくないよ。
わかっちゃったんだよ。
「俺がずっと好きなのは」
抱きしめられた時に、慶ちゃん先輩の心臓がものすごい速さで脈打ってた理由。
耳まで赤く染め上げている理由も。
全部、気づいたんだよ……。
「お前なんだよ、亜希」
熱のこもった瞳で、慶ちゃん先輩は私に告げた。



