体育館12:25~私のみる景色~


 佐伯先輩は、びくりと肩を揺らした。


 だけど、私を引き離すこともせず、そのままでいてくれてる。


「……別に、同情とかしなくていいから。ちょっと、最近参ってただけだから。あー、こんな姿見せるとか情けな……」


 全然、情けなくなんてない。


 情けなくないよ、先輩……。


 その気持ちを伝えたくて、頭をぶんぶん振って否定する。


「せ、先輩は、いつもすごく、かっこいいですよ……っ」


 だって今まで、こんなにも弱ってる姿を一度だって見なかった。


 それは佐伯先輩がずっと一人だけで頑張ってきて、それを悟られないようにしていたからだ。


 辛くて苦しくて、寂しかったと思うよ。


 すごくすごく、悲しかったと思うよ……。


「宮下さん、泣いてる……?」


 私の腕をほどいて、佐伯先輩は私の顔を優しく包み込んだ。


 私はうつむくこともできなくて、涙があふれる目で佐伯先輩を見つめ続けた。


 先輩は優しい、だけど少し困ったような顔で言った。


「……ごめんな。俺のために泣いてくれて、ありがとう」


 その瞬間、佐伯先輩の体温に包み込まれた。


 びっくりして、涙が止まった。


 だけど、佐伯先輩が身体を震わせているのに気がついて、その広い背中にしがみつき、私もまた、泣いた。