生まれてすぐに母親に捨てられたこと。
さっき喫茶店の近くで話してたのは佐伯先輩のおばさんで、しぶしぶながらも引き取ってもらえてお世話になっていたこと。
だけど、扱いがひどくて虐待まがいのことをされていたこと。
中学生のころ、厄介払いのようにお金の入った通帳を渡されたこと。
それから今まで、一人で暮らしていたこと。
高校生になって働ける年頃になったんだから、家に戻って働けと言われていること。
佐伯先輩の口から吐き出された言葉たちは、現実とは思えないことばかりで、私は困惑した。
「そんな……、でも、お父さんは……?」
「俺の母親、水商売やってたらしい。父親も同業の人だったらしいから、わからないんだと思う。俺が、誰との子供なのか」
いろんな男と関係持ってたらしいからな、と付け足すように言う佐伯先輩の声には、覇気がなかった。
すべてを諦めたかのような横顔に、切なくなった。
今までずっと、耐えていたんだろうか。
たったひとりで。
佐伯先輩のことを思うと、涙が出そうになったけど、ぐっとこらえる。
でも、次の佐伯先輩の言葉に、私はもう我慢ができなかった。



