体育館12:25~私のみる景色~


「座ってていいって言ったのに」


 そう言って苦笑する佐伯先輩の手には、湯気がたっている2つのマグカップ。


 甘い匂いがするから、ココアかな?


 それらを机の上に置いた佐伯先輩は私をソファーに座らせ、その隣りに腰を下ろした。


 思いのほか近い距離でドキドキが最高潮に達する。


 おまけに2人きりだ。


 だけど、そんなふうに浮かれてる場合じゃないんだよね。


 なんだか落ち着かなくて、髪を触ったり爪をいじったりして気持ちを落ち着けようとしたけど、効果はなかった。


「それ、飲んで」


 そんな私を見かねたのか、佐伯先輩はココアを進めてくれた。


 お礼を言って一口飲むと、少しだけ気持ちが和らいだように感じた。


「さっきのことだけど……」


 気分が落ち着いてきたころ、佐伯先輩が静かに言った。


 持っていたマグカップを机に置き、佐伯先輩を見つめる。


 その横顔は普段と変わらないように見えたけど、目には寂しさが宿っていて影があるように感じた。


 佐伯先輩は、ぽつぽつと話し出す。


 いつも通りの口調で、何でもない事かのように。


 だけど、先輩の口から紡ぎだされる過去と現在は、私にはとても想像しがたく衝撃的で、そして何より、それを淡々と話すその姿に胸が締め付けられるように痛くなった。