その声に、私たちは歩みだすのを止めた。
さっきまで人が何人かいたのに、いつの間にかここにいるのは私たちだけになっていた。
佐伯先輩が私たちに向けて話しかけたことは、一目瞭然だった。
濡れた目元を拭って私たちに近づいてきた先輩は、心底疲れきったような顔をしていた。
「大丈夫、ですか……」
全然大丈夫じゃないことなんか一目でわかるのに、そんなありきたりなことしか言えなかった。
それ以外に何を言えばいいのかもわからなかった。
佐伯先輩は力なく笑って「うん」と、消え入りそうな声で呟いた。
「……これから、時間ある?」
「あ、はい。私は大丈夫ですけど……」
佐伯先輩に返事をして、凉を見る。
もしかして、私たちが見ていたことについて何か言われるのかな?
それとも、さっきのことがどういうことなのか、説明しようとしてくれている?
凉も同じことを思ったみたいで、私に目配せをしてきた。
「佐伯先輩、あたしはいない方がいいですよね?」
突然何を言い出すかと思った。
凉だって見たんだから、話を聞くべきなのに。
「……できたら、2人にしてほしいんだけど」
それなのに、佐伯先輩が言ったのは、それを肯定する言葉だった。



