体育館12:25~私のみる景色~


 その声に、私たちは歩みだすのを止めた。


 さっきまで人が何人かいたのに、いつの間にかここにいるのは私たちだけになっていた。


 佐伯先輩が私たちに向けて話しかけたことは、一目瞭然だった。


 濡れた目元を拭って私たちに近づいてきた先輩は、心底疲れきったような顔をしていた。


「大丈夫、ですか……」


 全然大丈夫じゃないことなんか一目でわかるのに、そんなありきたりなことしか言えなかった。


 それ以外に何を言えばいいのかもわからなかった。


 佐伯先輩は力なく笑って「うん」と、消え入りそうな声で呟いた。


「……これから、時間ある?」


「あ、はい。私は大丈夫ですけど……」


 佐伯先輩に返事をして、凉を見る。


 もしかして、私たちが見ていたことについて何か言われるのかな?


 それとも、さっきのことがどういうことなのか、説明しようとしてくれている?


 凉も同じことを思ったみたいで、私に目配せをしてきた。


「佐伯先輩、あたしはいない方がいいですよね?」


 突然何を言い出すかと思った。


 凉だって見たんだから、話を聞くべきなのに。


「……できたら、2人にしてほしいんだけど」


 それなのに、佐伯先輩が言ったのは、それを肯定する言葉だった。