いつもより1時間も遅い電車の中。
4人がけのボックス席に座り、ガタゴトと揺れる振動に、また寝そうになる。
通勤途中のサラリーマンも、いつもはたくさん乗っている高校生の集団もいなくてとっても静か。
降りるまでたった数十分だけど、寝ちゃおうかな。
だけど、ここで寝たら乗り過ごしちゃいそうだなあ。
なんて思いつつ、もうすでに瞼は下りているんだけどね。
あ、慶ちゃん先輩も寝るの遅かったから、遅刻してたりして。
なんて、そんな偶然あるわけ……。
「亜希」
そんな偶然、あった。
響いた声は、まぎれもなく慶ちゃん先輩の声。
というか、男の子で私のことを呼び捨てにするのはみーくんと慶ちゃん先輩くらいだからすぐにわかった。
乗り込んだ時にこの車両に姿は見えなかったから、ほかの車両から移ってきたのかな?
目を開けると、びっくり。
そこにいたのは、慶ちゃん先輩だけじゃなかった。
「宮下さん、おはよう」
慶ちゃん先輩と同じく少し眠そうな顔で目の前に立っていたのは、佐伯先輩。
いつもより心なしか声が甘くとろんとしていて、眠いんだろうなってことがうかがえた。



