そんなことをぼんやりと考えていると、サエさんの顔が耳元に近づいた。
そして、低い声でこう言った。
「これ以上慶と恭也に近づいたらさあ、わかってるよね?」
それだけ言うと、サエさんはにっこりと笑って何か言いたげな慶ちゃん先輩の腕をつかんで「それじゃあね」と教室へと向かって行った。
こ、怖かった……。
ドクドクと嫌な音を立てる胸をぎゅっと押さえ、大きく息を吐き出した。
「はあ……」
「ため息つくと幸せ逃げるよ」
「佐伯先輩っ?」
いつからそこにいたのか、靴箱の陰から先輩が私にそう声をかけた。
先輩は私の近くに来て、少し心配そうな顔をして私を見つめている。
「藤村(フジムラ)と知り合い、ってわけじゃなさそうだったな。……あいつに何かされてないか?」
反射的に、肩がびくっと震えた。
いきなり物事の核心をつくような、鋭い質問にうろたえる。
佐伯先輩は、気づいているのかな。
でも、この紙の原因は佐伯先輩のようなものだし。
それに、今は受験とかで大変な時期なんだから、先輩を面倒事に巻き込みたくない。
ポケットの中に入っている不吉な紙がカサッと音を立てて、スカートの上からそこをつかんだ。



