体育館12:25~私のみる景色~


 ほら、どこかから女の子の悲鳴に近い声が聞こえるよ。


 周りの声が聞こえてるのかいないのか、それとも無視してるのか。


 慶ちゃん先輩はそんなことにお構いなしって感じだ。


「なあ、亜希。マジでそれって……」


「あー、慶! こんなとこで女の子に迫って何してるの?」


 慶ちゃん先輩が何かを言いかけた時、凛としたよく通る声が響いた。


「チッ……。なんだよ」


 忌々しげに舌打ちをして振り返った慶ちゃん先輩の視線の先には、綺麗な茶髪のロングストレートを持つ女の人。


 ……フジムラ、サエさん。


「あはは。慶、そんな怖い顔しないでよ。あ、宮下亜希ちゃんだ。……ふぅん? 話少し聞こえてきちゃったんだけど、ラブレター貰ったの?」


 そう言って近づいてきたサエさんに思わず身構えた。


 サエさんは意味深な笑顔を向けて、一瞬だけ背筋が凍るような冷たい視線を私に送った。


「い、いえ。そんなんじゃ……」


「だよね?」


 ぞくりとするほどキレイな笑みだったけど、その完璧すぎる作り笑いが怖い。


 これで確信した。


 やっぱり、この紙はサエさんが靴箱に入れてたんだ。


 今だって、“慶に近づくな”と目で訴えてる。


 ……鈍感な慶ちゃん先輩は、そんなことに気が付きもしないだろうな。