少しでも動いたら、鼻と鼻がぶつかりそう。
佐伯先輩の息が、私のくちびるを掠める。
もう、心臓が爆発しそうで、おかしくなっちゃいそうだよ。
「はは、リンゴみたい」
たぶんそれは、私の顔のことなんだろうな。
こんな状況なのに、佐伯先輩は余裕みたいで悲しくなる。
私はこんなにもドキドキしてるのに、きっと先輩はこれっぽっちもそんなこと思ってないんだよ。
だから、こんなふうに笑うんだ。
いかに私が恋愛対象から外れているのか思い知らされたような気分。
ほんとうに、佐伯先輩のことはよくわからないや。
私の上に覆い被さるようにしていた体勢を立て直して、佐伯先輩は起き上がろうとしてる。
私も手をついて、ベッドから半分身体を起こした。
平然としている佐伯先輩にやるせなくなって、目に薄い涙の膜ができる。
いつもより近い距離にいるのに、佐伯先輩の姿はゆらゆら揺れる。



