私が手を振り返したことで満足したのか、元気にコートへと戻っていった。
何がしたかったんだろう?
だけど、これで私は間違いなく敵を増やしてしまったと思う。
突き刺さるような視線を、四方八方から感じるもん。
胸にたまった不安も一緒に吐き出すようにふっとひとつ息をついた。
まあ、なるようになるよね?
気を取り直して佐伯先輩を見ようと、柵からぐっと身体を乗り出してコートを見下ろした。
「え……?」
佐伯先輩が、こっちを見てる。
たぶん、私を見てる。
冷えた眼光で、表情ひとつ崩さずに、私を見てる……。
どれくらいの時間、そうしていたのかわからない。
きっと本当は一瞬だった。
だけど、射抜くようなあの目がまぶたの裏に焼きついて離れなくて、いつまでも佐伯先輩自身にその目で見られている感じがした。
佐伯先輩に見てもらえて嬉しいはずなのに、喜ぶべきなのに。
どうしてか、そんな気持ちにはならなかった。



