じっとエプロンを見つめていると、それに気づいた佐伯先輩が話してくれた。
「……俺の家、父子家庭なんだ。だから、慶んとこでバイトさせてもらってるんだよ」
びっくりさせちゃったかな、なんておどけたように佐伯先輩は言うけど、なんだか寂しそうに私の目に映った。
なんて言ったらいいのかわからなくなって、口をつぐんだまま、開けなくなった。
「こんな話してごめんね? 宮下さんが気にすることはないんだよ」
優しく微笑まれたけど、痛々しい笑顔にしか見えなくて、なんだか胸のあたりをつままれたように、きゅっとそこが痛くなった。
もしかしたら、佐伯先輩が女の子に冷たい原因って、そこにあるんじゃないかとも思ったけど。
悲しそうな顔をこれ以上見たくなくて、佐伯先輩につらいことを思い出させたくなくて。
私は何も聞くこともできなかったし、反応を返すことすらもできなかった。
「あー、お取込み中悪いんですけど。俺、母さんに家に飾る花を買ってくるの頼まれてて。どんなのがいいかアドバイスくれません?」
いつの間にじゃれあいが終わったのか、みーくんが私たちの傍まで来ていた。
きっと、私たちがなんとも言えない空気をかもし出していたから、助けに来てくれたんだろうな。
みーくん、ほんとよく周りを見てるよね。
「どんな感じがいい? 例えば、花壇に植えるとか、室内でプランタか鉢植えで育てるとか、いろいろあるけど?」
「そうだなー。室内鑑賞用がいいです。プランタとか鉢植えはどっちでも」



