そのあと、男の人がどんなことを言っていたのかは覚えていない。
涙を止めることができないままお母さんに促されて家路について。
落ち着いて気がついたのは、私の手の中にちょこんと鎮座する緑の茎だった。
男の人の顔を最後まで見ることができなくて、どんな人だったのかは今でもわからないまま。
「……前にも、似たようなことがあったなあ」
過去のことを思い出して、笑いがもれてしまった。
「前って?」
佐伯先輩が、真剣な声色で言った。
「ふふ、3年前にもこんなふうに、土をかき集めたなあって」
あの時は、私がドジしちゃったんだけどね。
あの男の人、育て方や管理の仕方を書いたメモをお母さんに渡してくれていたんだよね。
その花、実は家の窓際に小さな鉢に移して育ててたんだ。



