体育館12:25~私のみる景色~


 不思議に思って、私はしゃがんだまま首をかしげて見つめてると、どんどん赤くなる先輩の顔。


 そのままどれだけ時間が経ったのかわからないけど、教室の入口の方から、低くてどこか甘い、私のよく知る声が聞こえた。


「慶、何してんだ? 帰るぞ」


 教室に顔をのぞかせた人は、正しく、佐伯先輩だった。


 髪の先が少し濡れていて、今まで部活で走り回ってたんだろうなってことがわかった。


 佐伯先輩は、顔を真っ赤にして何も言わずにいる中原先輩と座り込んでいる私の姿を見て、何があったか悟るように目を細め、私たちの方へ歩み寄ってきた。


 そんな姿もかっこいい……なんて思ってる場合じゃなくて。


「あ、の。さっき中原先輩にお弁当届けてもらって。ありがとうございました! それで、なんですけど。佐伯先輩、お弁当食べましたよね!? ごめんなさい、あれ、作ったの私で。お腹壊したらほんとにごめんなさい!」


 緊張したし噛んだけど一応言えた!


 初めて喋るのがこんなことだし、最初の印象も最悪だろうけど!