ぼーっとその人を見上げていると、ニカっと大きな口に弧を描かせるようにして、その人は笑った。
「久しぶりだな、亜希」
えっと、だから誰ですか、この人。
なんで私を知ってるの?
「あらぁ、海ちゃん久しぶり! かっこよくなっちゃって! サキエさんもお久しぶりね!」
固まったまま動けないでいると、廊下をスリッパでぱたぱたと走る音が聞こえた。
お母さんはエプロンの端で濡れた手を拭い、私の隣りに立った。
……というか、海ちゃんなんていないけど。
サキエさんっていうのは、私の目の前にそびえ立つようにして笑みを浮かべるこの男の人の後ろにいる、海ちゃんのお母さんのことだけど。
「久しぶりです、ユキさん」
「本当に久しぶりねっ! さっき帰ってきたところなの。旦那はまだ海外で」
だからなんで、この男の人は親しげに私のお母さんの名前呼んでるの?
ちょっとだけ、むっとした。
お母さんはにこにこと嬉しそうに2人の話を聞いてるし。



