体育館12:25~私のみる景色~


「んー、なんでそんな有名なのか自分じゃよくわかんないけど。俺だって普通に一人の男なんだけどな」


 ペタッとバンソウコウを貼り終わった後、佐伯先輩は苦笑いしながら頭をかいた。


 ……ひとりの、男。


 そう聞いて、今この空間に先輩と2人きりなんだってことを、改めて気づかされた。


 意識すればするほど緊張して、息苦しくなってくる。


 先輩の貼ってくれたバンソウコウの部分をおさえて、身体を縮こまらせる。


 ……沈黙。


 気まずい、非常に気まずい。


 これといって会話も思いつかないし、お互いだんまり状態。


 あーもう!


 慶ちゃん先輩、早く戻ってきてよっ!


「くそ、走ったら汗かいたわ。ほらよ」


 私の願いが伝わったのか、勢いよくドアが開いて慶ちゃん先輩が中に入ってきた。


 “ほらよ”と投げられたのは、佐伯先輩のハンカチ。


 濡れて濃い青に染まってるように見える。