「んー、なんでそんな有名なのか自分じゃよくわかんないけど。俺だって普通に一人の男なんだけどな」
ペタッとバンソウコウを貼り終わった後、佐伯先輩は苦笑いしながら頭をかいた。
……ひとりの、男。
そう聞いて、今この空間に先輩と2人きりなんだってことを、改めて気づかされた。
意識すればするほど緊張して、息苦しくなってくる。
先輩の貼ってくれたバンソウコウの部分をおさえて、身体を縮こまらせる。
……沈黙。
気まずい、非常に気まずい。
これといって会話も思いつかないし、お互いだんまり状態。
あーもう!
慶ちゃん先輩、早く戻ってきてよっ!
「くそ、走ったら汗かいたわ。ほらよ」
私の願いが伝わったのか、勢いよくドアが開いて慶ちゃん先輩が中に入ってきた。
“ほらよ”と投げられたのは、佐伯先輩のハンカチ。
濡れて濃い青に染まってるように見える。



