「ちょい待て、亜希。早まるな! 俺が好きなのは……!」


 私の腕をガシっとつかんで説得しようとしてるけど。


「大丈夫だよ慶ちゃん先輩っ。今は同性愛とか珍しくないからっ。私は批判はしないけど、応援は絶対しないんだからね!!」


「だから、そうじゃなくて聞けよっ!」


 慶ちゃん先輩が吠えるけど、メラメラと目に炎を宿す私にはそんなの関係なかった。


 これからは、妥当慶ちゃん先輩!


 女の子よりも強敵かもしれないよね?


 なんてったって佐伯先輩の1番近くにいて、佐伯先輩のことをよく知ってるんだもん。


 ……というか、佐伯先輩が女子に冷たいのって、もしかして男の人が好きだからとか?


 もしかして、慶ちゃん先輩が好きとか?


 それはないよね、ないないないない!!


 とりあえず私は、佐伯先輩を怒らせちゃった理由を聞いて謝らないとなあ……。


 今は嫌われててもいいから、いつか修復できますように。


「……俺、もしかしてとんでもないことしちまったか?」


 心の中でいろいろなことを想像している私の横で、慶ちゃん先輩が愕然と呟いていることになんて、私はまったく気がつかなかったんだけど。


 こうしてこの日、慶ちゃん先輩という超手ごわいライバルができたのだった。