はじめっ!の声で始まる勝負。

創は門下生から竹刀を借りて、あたしとの勝負に挑んだ。






…なんでだろ。

全然攻撃してこない…。


あたしも、攻撃せずに相手の行動を観察した。


すると突然ひゅっという音がしめて、腰に振動がきた。


一瞬、竹刀の軌道が美しい青色に染まった気がした。


「…なんだっけ、ドー?だっけ??」



防具を付けてるから、痛くはない。

でも、心臓がバクバク言っている。


「う、そ……」

師範の代わりも務めるあたしが、一般人に負けるなんて。

なにより、ショックが大きかった。


バサバサと防具を脱いで、鼻歌交じりに片付けをしている創。

あー、ショックすぎる。

幸い、門下生はみんな帰るところで、あたしたちの勝負を見ている人はいなかった。


すると、創はあたしに謝ってきた。

「薫子?…ごめん、ちょっとズルしたわ」

「え…?」

「青龍の力、つかった。使わなかったら勝てる訳が無い。俺、剣道はじめてだし」

困ったように笑顔を作る創を見て、あたしはなんとなく彼を許してしまった。

「まぁいいよ。あたしは何すればいいの?」