うちの学校の剣道部は、だいたい全国大会の三位落ちという、なんとも微妙な結果を残し続けている。
かれこれ、今年で11回目の全国大会三位だと言う。
あたしが、剣道場の娘だというのは皆知っていること。
だから、剣道部の人がしょっ中あたしに声を掛けてくる。
正直、自分の家の道場で精一杯。
学校でも家でも竹刀を振るなんて、疲れちゃうよ、ほんとに。
「ほらー、朝のSHR(ショートホームルーム)始めんぞー席つけー?」
担任の石倉、通称石ちゃん。
…剣道部顧問。
「皆知ってると思うけど、転校生」
え?
知らないんだけど。
みんな、待ってましたとばかりに盛り上がる。
「転校生は聞いてたけど、イケメンだといいねぇ?
男みたいだし」
愛美?
え?
みんな転校生を知ってるの?
あたしだけ、転校生を知らない?
まさか。
遅刻はするけど、
欠席とかしたことないし、
学校の情報はそれなりにわかるつもり。
転校生なんて、聞いてない…
「ねぇ石ちゃん、男なんだろ?
イケメン??」
クラスメイトが石ちゃんに聞いた。
「ハハッ、見てからのお楽しみだな。
じゃー、松倉、入れ」
松倉、と呼ばれたその転校生がドアを開けて入ってきた。
その瞬間、みんなが息を飲んだ。