私が向かう方面とは逆の方向に行く電車がホームに滑り込んだ。 …加藤くんの高校は違う方向なんだなぁ。 「じゃ、俺行くから。 あ、コレ」 「へ…?」 電車に乗り込む前に加藤くんは鞄からなにかを取り出し、 私の首にそれを巻き付けた。 「母さんに無理やり持たされたんだけど、 俺マフラー嫌いだからさ。これ使って?」 「で、でも…っ」 いつ返せるかわからないのに! って言おうとしたら、もう電車の扉は閉まっていて。 首に巻き付けられたマフラーを返せないまま、加藤くんはいなくなってしまった。