声も匂いも体温も何もかも失いたくない

握手をするように差し出された手を掴んだ時から

手を繋ぎたいからと言って離さずに

離れたくないと引き寄せられて抱き締められる

いつかは終わりが来る関係なのだと分かっていた

好きだけではどうにもならない

ゲーム内のチャットで連絡するような

誰にも知られないようにしないといけない

秘めなければならない関係

朝起きたら隣に居ないなんて嫌

眠っている間に黙って帰らないで

そう言えば落ち着かせるように

諦めたように仕方がなさそうに

トントンと優しく背中を叩いてくれる

別々の道を歩み始めディバイドされる

その日までのほんの少しの間だけ

夢のように幸せなこれらの時間を

日がな一日分をこの胸に留めておけたなら

自分だけにくれるこの笑顔を忘れなければ

独りになってもきっと生きて逝ける

そう思ったのにそう思い込みたかったのに

未来の断片をほんのちょっと垣間見ただけで

遣る瀬無さが際限なく込み上げてくるならば

出船の纜を引くように指をくわえたままに

離れ離れになって壊れそうになるならば

怒涛の万歳三唱‐ハンマープライス‐で

強制的に有終の美を飾らされる前に

バージンに手を付けてブレイクスルー

世界の未来からかっさらえばいい