破壊神と恐れられる男がいる街


不良やヤクザさえも恐怖する
強すぎる男


電信柱や標識をいとも簡単に引っこ抜いたりへし折ったり

自販機や車を投げ飛ばしたり


沸点が低く力を制御出来ぬ男に
近寄る者など誰一人いなかった


今日もまた、何かを破壊する

爆発した力が、側にあった自販機で
怒りの元凶を静めようと振りかざした



「あの、それ取ってもいいですか?」



男の背から投げ掛けられた声は、ひどく落ち着いていた


振り向いた先にいた
男の母校の学生服を着た少女


指先したのは自販機

よく見ると受け取り口にはジュースが1本



目を合わせて話したのは、
話しかけられたのは、
いつぶりか


そんなことを考えながら、差し出したジュース



「ありがとうございます。」



受け取りお礼を言って、何事もなく去った少女


少女は終始無表情だったが、男には違って見えた



第六感で見抜く少女と
偽りのない素直な男の

ほんの些細な、なれそめ話