「あんたは死神。名前はアンク……で、合ってるわよね?」
藍子が少年―アンクを見遣る。
思い出したか、とアンクは瞬きをした。すると、瞳の色が赤色から黒色に戻った。
「ちなみに、契約内容は覚えてるか?」
「いーや、全っ然」
「…………」
忘れっぽい藍子に倦怠感を覚えつつ、アンクは説明を始めた。
四年前、福寿魂神社に訪れた藍子に、アンクは幾つかの条件を持ち出した。
・対象人物(千鶴)の寿命を延ばすのではなく、依頼者(藍子)の寿命と交換するので、本来の寿命と変わってしまうことを承知すること。
・承知した場合、千鶴の本来の寿命が藍子の物になるので、あと四年しか生きられないということ。
・寿命が終わったら、死神となりアンクに協力すること。
・それを拒否した場合、悪魔の餌食になるのは必須である、ということを理解すること。
アンクから条件を聞いた藍子は、首を傾げた。
「聞いた記憶はあるけど……死神とか悪魔とか、意味わかんない」
「まあ、その内理解するはずだ。ついでに、神原千鶴の本来の寿命は今日で終わりだ」
「と、いうことは?」
「死神になるってことだな。さもなくば、悪魔の餌になるか」
腕を組んで大真面目に答えるアンクに、藍子は右手を振ってみせた。
「有り得ないしっ!」
悪魔とか死神とか、かなり危ないやつだ。
しかし、とアンクが抗議する。だが、藍子は相手にしない。
「はいはい。今度いい病院紹介するからねー、ばいばーい」
そう言って、アンクを部屋から追い出す。
勿論、アンクは納得がいかなかった。しかし、これ以上言ってもわからないだろうと判断し、一言残していった。
「注意しろ。明日の日付になったら、お前は格好の標的だ」
わかったわかった、と適当に返事をする藍子は、過去に福寿魂神社で起こった奇跡を忘れたままだった。
………ひとり。
ひとり。ひとり、ひとり……
ひとり、ひとり。
ひとりは、いやだよ………
