同日、月ノ宮学園に帰って来た藍子は、施設の責任者である三原泰子に迎えられた。
泰子は七十歳くらいのおばあさんだが、足腰がしっかりしていて、あと五十年は生きそうな人である。
「藍子、お客さん来とるぞー。彼氏くんかい?」
「……彼氏?」
彼氏なんて作った記憶はない。
ならば、もしかして。
「お父さん、かな?」
そう考え、客がいるという自室へと走り出す。
藍子は、父親の顔を知らない。
生まれてすぐに両親が離婚し、母親側に引き取られたからだ。
ちなみに月ノ宮学園は、両親がいなかったり、様々な事情で両親と離れ離れになった子供達の集まる場所だ。
藍子の母親は、藍子が物心つく前に過労で亡くなった。頼れる親族もいなかったので、藍子は月ノ宮学園に引き取られた。
だから、藍子はその客が、父親としか考えれなかった。
母親が死んだことを知って、自分を引き取りに来たのだと。
しかし、そんな都合がよくないのが現実。
ドアを開けた藍子の瞳に映ったのは。
「お邪魔してまーす」
藍子のベッドに座り、清潔感という言葉とは離れすぎている、同年代の少年であった。
