桜雨〜散りゆく想い〜

 考える僕の手に水滴が一粒落ちて跳ねた。


 「降ってきたか……教室に戻ろう」


 言うが早く、僕は弁当をしまってから、足早に校舎への扉まで行き、ドアを引いた。


 秒単位で雨足は強さを増していき、本降りになる。


 校舎に入ってから香が来ていない事に気付いた僕は、慌ててドアを開き屋上へ顔を出した。


 「香ちゃん!」


 フェンスに指をかけて立ち尽くす香は、僕の言葉が聞こえないのか微動たりしない。